本研究の目的は文章を読む際に要約作業を行うことが読解にどのような影響を及ぼすかを検討することであった。実験Iでは要約作業の有無と文章の構成を変数としてとりあげたところ,要約作業を行うことは正順序の文章においては読解を促進するが,無作為順序の文章においては促進しないことがわかった。また,このような効果は真偽判断テストの成績に反映され,文章完成テストには反映されないことが示された。実験IIでは要約作業が果たす主たる役割と思われる論旨展開の理解と重要な内容の選択作業をとりあげこれらの要因の効果を検討したが,論旨教示条件,選択作業条件の成績は統制条件より向上しなかった。以上の結果から,要約作業が読解において果たす役割は積極的に文章に働きかけることによって一連の読解のプロセスを促進することであると考えられる。