文章を黙読した場合と音読した場合とでは,文章の記憶及び読解の成績にどのような違いが生じるかという問題を,大学生を被験者として検討した。その結果,音読することは,文章を逐語的に記憶する場合には有効であるが,その効果は一時的であることがわかった。これに対し,黙読することは,文章を逐語的に記憶するというよりも,文章の内容を体制化して記憶する場合に有効であり,その効果は音読の場合よりも永続的であることがわかった。 一方,黙読するか音読するかということによって,読解の成績には顕著な差はみられなかった。このことは,黙読するか音読するかという事が読解と無関係であるというより,読解テストのやり方自体に方法上の改善をほどこす必要があるということを示唆するものと考えられる。