文章基本信息
- 标题:歴史時代における日本人の顎顔面形態の推移
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- 作者:亀谷 哲也 ; 九良 賀野進 ; 埴原 和郎 等
- 期刊名称:Anthropological Science
- 印刷版ISSN:0918-7960
- 电子版ISSN:1348-8570
- 出版年度:1982
- 卷号:90
- 期号:3
- 页码:303-313
- 出版社:The Anthropological Society of Nippon
- 摘要:日本人の顎顔面形態は,新石器時代以降,歴史時代を通じて,いくたびかの変動を経て現代人のもつ型へと変ってきたと考えられる。そし•その流れは,過去2000年の間に認められる discrepancy のほゞ単調な増大の経過から考えると,一貫して退化の方向に向うものであったと解釈される。歯と顎骨の大きさの不調和としてとらえられる discrepancy は,従来,不正咬合の病因の1つとして考えられていたが,最近,さらに多くの歯科疾患と直接あるいは間接の病因的関連性をもつことが指摘されている(井上,1980),人類における文化の発達が総合咀嚼器官の形態的な変化をひき起し,これにともなう discrepancy の増大が歯科疾患の増加をもたらしているということになる。この一連の問題を解くために,著者らは,咬合系に現われた変動を顎顔面形態の小進化という立場から把握しようとし,咬合の変化が最も急速に進んだと思われる歴史時代以降の日本人顎顔面形態の時代的推移について検討を行ってきた。本報告は,とくにその全般的な概観についてのものである。資料のうち,歴史時代のものとしては,東京大学総合研究資料館人類先史部門所蔵の日本人古人骨1379体から選んだ,咬合状態の確認が可能な,後期縄文時代から江戸時代までの標本95体を用いた。これらについ•は,頭部X線規格写真の撮影を行い,歯科矯正学領域における診断法を応用して分析を行った。現代人に関しては,岩手県衣川地区における地域医療活動(高木,1978)に際して得られた288名の頭部X線規格写真をい,古人骨におけるのと同じ分析を行った。結果として,日本人の顔面頭蓋が,後期縄文時代から現代までの間に,顔の高さでわずかに増大し,顔の深さでは,とくに下顔面部において縮小の傾向を示していることが知られた。ま•それぞれの計測項目における変化は,増大,縮小,あるいは不変のいずれかであったが,中世にはほとんどすべての項目において増大あるいは縮小方向への一時的,かつ明確な変動がみられた。この点については中世日本人が元来形質的な特異性を持っていたことによるものであるか,気候的あるいは社会的変動などによる好ましくない食環境が存在したためであるのかは明らかではないが,今後の問題として興味深いもののように思われた。上顎骨は,中世において一時その前後径を増し,突顎の傾向を示すが,現代までに再び縮小する。この変•は骨体部よりもとくに歯槽基底部において著しい。下顎は最も大きい変化が認められた部分であって,とくに下顎枝の短縮が著しく,この結果顎角は開大する。歯槽基底部の前後径の短縮は下顎においても著明であった。上下顎の切歯軸傾斜は,後期縄文時代におけるかなり直立した状態から,鎌倉時代の強い前傾を経て,再び直立の傾向を示すが,全期間を通じてみると,なお前傾が強まっているように思われる。このこと•上下顎骨の歯槽基底部の短縮の直接的な影響によるものと考えられ,歯と顎骨の不調和の成立と進行に深いかかわりがあると思われる。