摘要:超音波装置を用いて,6歳から19歳までの男女271名を対象に前腕,上腕,下腿,大腿の筋断面積を測定し,身長を基準とする体肢筋断面積の相対発育について検討した。その結果,対数表示による身長(X)と筋断面積(Y)の関係は,2つの変移点をもつ3相の直線で表わされた。第一変移点に相当する身長は,男子が152.1~153.2cm,女子が140.4~142.4cmであり,アローメトリー式 Y=bXa の係数 a は,変移点を境に男子が1.660~2.208から3.218~6.507へ,女子が0.932~1.768から4.918~6.507へと,それぞれ身長に対する幾可学的相似性から考えられる以上に増加した。第2変移点に相当する身長は,男子が163.1~164.0cm,女子が148.9~151.6cm であり,第2変移点後,係数 a は男子が0.736~1.450,女子が0.869~1.709へと減少した。第1変移点および第2変移点に該当する年齢は,それぞれ男子が12歳と16歳,女子が10歳と14歳であり,第1変移点から第2変移点にかけての筋断面積の急激な増加は,思春期発育によるものであると考察した。測定部位間で係数 aを比較すると,男女とも第1変移点前および第2変移点後では,上肢より下肢の筋群が高く,第1変移点から第2変移点までは,上腕,大腿が前腕,下腿より高い値を示した。これらの結果は,思春期前および思春期後においては,下肢の筋群の発育が,上腕のそれより優位であり,思春期では前腕と下腿より上腕と大腿の発育が上回ることを示すものと考えられる。