摘要:骨形態学的には西北九州弥生人は縄文人の直系であり,北部九州弥生人には渡来人の影響があったとされている。歯ではC. L. BRACEらが北部九州弥生人の歯が縄文人よりも大きいことを明らかにしている。本研究では縄文人,西北および北部九州弥生人の歯冠計測を行い比較検討した。その結果,北部九州弥生人が縄文人および西北九州弥生人に対して大きな歯を持ち,縄文人と西北九州弥生人との間にはほとんど有意差がなかった。先の3集団に現代人資料を加えた4集団に関してペンローズの距離分析を行ったところ,縄文人と西北九州弥生人,北部九州弥生人と現代人の2つのグループに分かれ,前者は後者に対して相対的に小さな歯を持っていた。