もち性大麦を試料とし, 米と大麦の混炊, そして炊飯過程の60℃で15分間保持する炊飯方法が, 飯の糖量や冷蔵前後の物性に与える影響を調べた. 炊飯液のpHは浸漬直後から大麦の混合率が高いほど低下した. 飯の全糖, 還元糖, マルトース, グルコースは, 混炊, かつ60℃保持の炊飯により糖量が著しく増大した. 混炊により, デンプン分解酵素の至適pHに炊飯液のpHが近づき, 酵素の至適温度である60℃を保持することにより, 大麦の β -アミラーゼが大麦ならびに米に作用してマルトースを生成し, 米の α -グルコシダーゼがこれらをさらに分解したことが, 糖の増加に関与したと考えられた. 物性測定の結果, 大麦の飯粒に対しては混炊ならびに冷蔵による老化の影響はわずかであった. 米粒の方は, 常法の温度履歴で調製した飯は混炊することにより米のみの飯よりも老化が抑制されたが, 60℃保持炊飯では米粒の老化程度が常法炊飯よりも大きく, 混炊の効果は見られなかった.