高次脳機能障害を呈する外傷性脳損傷者の就労を目標にリハビリテーションを実施する時に, 明らかな麻痺を呈していないにも関わらず作業速度の低下や作業完成度の低下を実感する。今回, 高次脳機能障害外来通院中で両手動作可能な 14 名の就労世代を対象に, これら作業速度低下の要因について調査を行った。方法は, 神経心理学的検査と職業能力検査を行い, Z スコアを用いて分析を行った。結果, 外傷性脳損傷後の事例では, WAIS-III 成人知能検査 (Wechsler Adult Intelligence Scale-Third Edition : WAIS-III) の処理速度の項目で低下を示した。また厚生労働省編 一般職業適性検査 (General Aptitude Test Battery : GATB) は全項目に低下を示し, とりわけ上肢能力を測定する項目が著明に低下していた。WAIS-III における処理速度の項目には, 認知と運動が関与し, 外傷性脳損傷の場合は, 運動面の低下が多大に影響を与え, そのため作業速度が遅くなる可能性が高いことが示唆された。