筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 患者における仮名, 漢字の書字障害の特性と脳病変部位との関連性を検討した。対象は ALS 患者 14 名と年齢, 教育歴, MMSE 得点を合わせた健常対照群 16 名であった。各対象群に仮名書字課題, 漢字書字課題, 類義語判断課題と線画連合課題を実施し, SPECT を用いて測定した安静時局所脳血流量とこれらの課題成績との相関を解析した。その結果, 仮名の書字障害を 12 名に認め, 音節, モーラ, 文字が対応しない語で多く誤った。また漢字の書字障害を 8 名に認め類音的錯書が特徴的であった。類音的錯書の出現数と類義語判断課題成績の間に有意な相関を認めた。仮名の書字障害は左中前頭回後部, 漢字の書字障害は左優位に側頭葉極部の局所脳血流量と有意な相関を認めた。ALS 患者の中には仮名, 漢字の書字障害を呈する者が存在し, 仮名は左前頭葉後部, 漢字は側頭葉極部の機能低下が関与すると考えられた。