2018年に岩手木炭が林産物として国内では初めて,地理的表示保護制度に登録された。本稿は,地理的表示保護制度がいかなる制度かを概観した上で,岩手木炭が申請に至った背景ならびに過程を検証し,林産物特に木材の地理的表示活用の可能性と今後の展望を議論する。岩手木炭においては,申請の動機,申請を終えるまでの過程,品質の描写等の申請段階での困難,産品の品質規準などの項目を調査・分析した。その結果,申請主体と生産者の間の合意形成が円滑に進んだこと,生産のマニュアル化による品質管理が申請前から継続的に実施され,登録を果たす要因となったことが判明した。