本研究の目的は, 自動詞的・他動詞的動作の産出能力に対する介入効果の汎化と質的経過を検討することである。対象は左大脳半球の脳出血後から約 4 ヵ月経過した 70 歳代の右利きの女性であった。神経学的所見では, 右半身の運動麻痺, 感覚障害, 筋緊張の異常を認めた。神経心理学的所見では運動性失語, 標準高次動作検査より, 口部顔面失行, 観念性失行, 観念運動性失行を認めた。本研究はシングルケースデザインを用い, 自動詞的・他動詞的動作の産出障害に対する介入効果を検討した。介入は, 誤りなし学習で行い, 分析は, 自動詞的・他動詞的動作の産出能力を得点化し, 質的にも分析した。結果, 介入効果が認められるとともに効果の汎化があった。質的分析の結果は, 介入経過の中で「修正行為」の増加が認められた。この「修正行為」は, 意識的な情報処理に伴う動作の試行錯誤により産出されたと考えられた。