失語症のリハビリテーションでは, 失語症当事者と言語聴覚士が協働して, 訓練目標を設定することが大切である。そのためには, まず失語症当事者の思いを把握することが求められる。当事者の思いを把握し, 訓練の有効性を評価するためのツールとして, 近年, 患者報告アウトカム (patient-reported outcome, 以下 PRO) が注目されている。我々は, 現在 PRO 測定法の一つである Aphasia Impact Questionnaire-21 (AIQ-21) (Swinburn 2015) の日本版 (以下 JAIQ-21) を作成中である。本稿では, 生活適応期の失語症者に, 作成中の JAIQ-21 を試用した結果を報告した。失語症重症度が異なる 2 名の失語症者に JAIQ-21 を実施したところ, 当事者が抱える思いは失語症の重症度からは予測できず, それぞれに特徴があった。地域社会において失語症者のコミュニケーション力を高め, 失語症者自身が望むその人らしい生活を再構築するために, 自己評価である PRO 測定法を利用することの重要性が示された。