高次脳機能障害における社会的行動障害に対しての治療的介入は確立していない現状であるが, 脳損傷後の行動障害に対して, 患者の気づきのレベルや抑制コントロールに合わせて行動的アプローチと認知的アプローチなどの治療の形を変えていく必要がある (三村 2009, Sohlberg ら 2001) 。しかし, 気づきの定量化は難しく治療を選択・変化させる指標は明確ではない。今回, anger burst を呈した若年症例について, コーピング活用の観点から後方視的に検討し, アプローチの比重を変化させるタイミングを考察した。その結果, 行動的アプローチ期で学習したコーピングを活用して, 怒りに直面した際の適応行動が出現し, Social Skills Training (SST) などの場面で自発的にコーピングの活用がみられた時期, つまり, 自己の不適切行動を修正しようとする意欲が生じた時期が認知的アプローチへ変化させるタイミングと考えられた。