本稿の目的は、人工知能とエンハンスメントの汎用化が「学ぶ意味」や「学力」をどのように変容させるのか、教育学にもたらす課題は何かを考察することである。人工知能による教育への影響については、すでに内閣府(2017a)が言及している。そこでまずはこの資料を分析し、有用性の観点から学習を意味づけることの限界を指摘した。次に倫理学研究からのエンハンスメント批判を援用しながら、人工知能とエンハンスメントの時代においては、有用性と対極の「現在的レリバンス」や「教養」「学びへの信頼と希望」によって「学ぶ意味」と「学力」を再定義する必要があることを示した。