本研究では,ウメジャム加工の前処理として,果実(ウメ青果)をさまざまな温度条件で加熱(定温予備加熱)し,ジャムの性状を変化させることを試みた.その結果,以下の知見を得た.(1)果実の定温予備加熱により,ジャムの力学特性は定温予備加熱温度依存的に変化し,60℃付近の温度帯で30分間予備加熱したとき,最も破断応力が大きく,加熱時の保形性に優れたジャムを作製できた.(2)果実に含まれるペクチンは,無処理(非加熱)の果実ではほとんど不溶性であり,定温予備加熱により加熱温度が高いほど多く可溶化され,同時に低分子化が起こることが分かった.60℃30分程度の定温予備加熱は,ペクチンを可溶化し,かつ比較的高分子量に保つ点で,ペクチンをゲル化に最も有利な状態とする処理であったと考えられる.(3)定温予備加熱によるペクチン可溶化の機構には,酸加水分解による部分的な低分子化が関与すると考えられる.