全国新酒鑑評会出品酒の「香辛料様・4VG」の特性に寄与する成分を検討した。揮発成分の網羅解析の結果,「香辛料様・4VG」指摘酒は指摘のない対照に比べてguaiacol,4VG,ラクトン類,エチルエステル類の濃度が高い傾向がみられた。このうちguaiacolおよび4VGはGC-olfactometryにおいて「薬品・煙様」,「カレー・香辛料様」のにおいとして検出され,「香辛料様・4VG」の特性に関与している可能性が考えられた。SBSE-GC-MSによりフェノール化合物の定量分析を行ったところ,guaiacol濃度は「香辛料様・4VG」の指摘数が多いものほど高くなる傾向がみられ,検知閾値(22 μg/L)を超えるものもあった。4VGについては加熱脱着時のフェルラ酸の分解により分析値はやや高い値となるが,それを差し引いても指摘酒では7割以上のものが検知閾値(52 μg/L)以上の濃度であると推定された。4EGはほとんどの試料で不検出であったが,指摘酒のうち1点に比較的高濃度の4EGが検出された。これらの結果から,鑑評会出品酒の「香辛料様・4VG」の特性には4VGだけでなくguaiacolや4EGも関与していると考えられた。