高濃度(約17.5%)の大豆タンパク質-水分散系に大豆油を撹拌しつつ滴下,乳化させ,得られた乳化物の挙動を検討して次の結果を得た。 (1) 等電点において乳化物は形成されなかった。 (2) 未変性タンパク質は,熱変性したものに比べて著しく高い乳化力を示した。しかし,中性における熱変性タンパク質の乳化力は,食塩や蔗糖の添加で2倍から3倍に増加した。 (3) 未変性タンパク質の乳化物(油:タンパク質=4:1)を加熱してから冷凍した場合,等電点付近を除いてほとんど100%の安定性を示すのに対し,熱変性タンパク質では60%に低下した。 (4) 乳化安定性は食塩や蔗糖によって影響をうけぬ場合が多いが,中性付近における未変性タンパク質の乳化物は,蔗糖の添加により凍結に対する安定性がかなり向上した。 (5) 乳化物の性状はpHにかかわらず粘りのあるペースト状を呈し,これを加熱すると中性から酸性で脆弱なゲルを,アルカリ性ではかなり強固な咀噛性ゲルを形成した。 (6) 上記(3),(4)に示した凍結耐性は,高濃度の大豆タンパク質乳化物を冷凍食品に利用する場合の可能性を示唆して注目された。