アイスクリームは,気泡,氷結晶,その他の乳製品などにより構成され,気泡の含有率をオーバーラン(Overrun: OR)という.気泡は,フリージングにより生成され,アイスクリームのテクスチャーに大きな影響与える.
OR値は,同一体積におけるアイスクリームミックスとアイスクリームの重量の比で精度よく算出されるが,同じORの値であっても,気泡大きさとその分布は最終品質に影響を与える.気泡は光学顕微鏡,SEM,X線CT,MRIなどにより計測されるが,これらは,装置毎に計測範囲および空間分解能が異なり,試料のミクロからマクロ構造の計測が困難である.本研究の目的は,アイスクリームのテクスチャーを解明するために,極低温ミクロトームイメージングシステム(Cryogenic Microtome Imaging System, CMtSIS)により,アイスクリーム内のミクロからマクロ気泡を計測することにある.
供試試料は,市販のソフトアイスクリームを用いた.CMtSISは,試料を切削するミクロトーム部,自動XYステージ,切断面画像の取り込み部で構成される.異なる計測範囲は,対物レンズ10倍,20倍,50倍における連続2次元断面画像をそれぞれ取得した.また,XYステージの自動位置決めは,計測範囲194×154 μ mに相当する50倍の対物レンズを用い,横軸移動量194 μ mで5回,縦軸移動量154 μ mで5回ずつ行い,同一断面から25枚の画像を取得・結合した.気泡形状は,面積,長軸,短軸を計測し,気泡の面積に相当する円直径を算出した.
相当円直径の平均は,10倍,20倍,50倍それぞれ34.2 μ m,17.9 μ m,8.0 μ mで,50倍では10 μ m以下が75.2%,20倍では10~30 μ mが71.8%,10倍では30 μ m以上が54.9%であった.これらは同じ試料にも関わらず計測範囲の違いにより,その値が異なった.自動位置きめにより得られた25枚の結合画像から識別された気泡は322個で,長軸の最大が277.5 μ m,最小が0.8 μ m,平均が28.2 μ mであった.相当円直径の最大が231.2 μ m,最小が0.6 μ m,平均が21.1 μ mであった.統合した画像の大きさは970×770 μ mで,アイスクリーム内の最大気泡(長軸277.5 μ m)が3個ほど計測可能な範囲である.この計測範囲(広範囲)において,ミクロ(0.8 μ m)からマクロ(277.8 μ m)までの気泡計測が可能になった.