従来, 剣道に関する姿勢研究は, 経験的に多く云々されているが, 運動科学的な研究は余りみられず, 特に打撃中の動的姿勢に関する分析的研究は未だ十分ではない. そこで有効な打撃技術を理解すると共に, その熟練による姿勢が常習化され, 良い姿勢の獲得に役立つべく, 打撃動作の姿勢分析を試みた. 対象動作は, 正面, 右小手, 右胴の基本打撃動作で, すべて動的姿勢をその熟練度により比較検討した. 分析は動作中の身体角度変化, 動作反応時間, 動作時間, 及び動作中の筋放電状態等の面から検討した. その結果, 熟練者の動作中の姿勢は, 常に有効な姿勢が反射的にとられ, 動作反応も早く, 動作時間の配分も適切にして打撃効率を高めているのがみられた. さらに, 動作中の客筋放電の傾向により, 筋の適切な緊張によって動作を円滑にしているのが理解された. この動的姿勢の習熟は静的姿勢にも影響し, 良い姿勢の形成に役立つものと思われる.