日本産漆の需要量が高まる中,今後の日本産漆を安定的に供給するため,ウルシの資源増産が必要であり,そのためには植栽適地を評価することが緊急かつ重要な課題となっている。本研究では青森県,岩手県,新潟県,茨城県4県における111カ所のウルシ林分を対象として,植栽木の成長と複数の立地環境および林分状況との関係を調べた。応答変数を胸高直径の林分平均値,説明変数を六つの固定効果(立木密度,斜面方位,土壌群,年平均気温,最大積雪深,つる被害割合)と一つの変量効果(県)とした一般化線形混合モデルおよび一般化線形モデルにより解析を行った。赤池情報量基準に基づいてモデル選択を行った結果,選ばれたモデルでは年平均気温で正の係数,最大積雪深で負の係数が示された。これまでに広域のデータに基づく環境要因の影響を明らかにした報告はなく,本研究は環境要因に基づくウルシ植栽適地の判定に有用な情報を提供するものである。