少花粉品種で構成される採種園で,期待される少ない花粉量の種苗を生産するには,園外からの花粉混入をなくす必要がある。そのため,本研究では,花粉飛散期のみビニールハウスで囲う時期限定ハウス採種園と屋外採種園を想定した試験地を造成し,花粉混入率を比較した。また,花粉混入のない種苗を生産するもう一つの方法として混合花粉を用いた人工交配(ポリクロス)がある。本研究では,三つのクローンの花粉を等重量ずつ混ぜた混合花粉を用いたポリクロスで得られた実生苗の花粉親を明らかにし,均等寄与からの隔たりを調べた。その結果,時期限定ハウス採種園は花粉混入の軽減に有効であることが明らかとなった。花粉混入率の軽減の程度は屋外の個体の花粉最大飛散日の後にビニールを撤去することでより高くなったが,ビニールの撤去が遅いほど種子発芽率は低くなった。一方,人工交配では花粉混入は検出されなかった。また,ポリクロスを行う際に使用する花粉の発芽率が低いクローンでも父親として十分に寄与していたことから,少花粉ヒノキの種子生産に有効と考えられた。