膵β細胞は血糖依存的にインスリンを分泌することで糖代謝調節の一翼を担う。膵β細胞から分泌されるインスリン量をいかに保つかということが2型糖尿病の予防において重要な課題となっている。本研究では, 膵β細胞に対する食品関連因子の影響を培養細胞, 単離膵島, マウス個体レベルで評価し, インスリン分泌機能制御の可能性を検証した。その結果, 大豆や葛に著量含有されるダイゼインから腸内細菌によって産生される S -エクオールが, エナンチオ選択的に膵β細胞のプロテインキナーゼAシグナルを活性化することによって, 膵β細胞の増殖促進, 細胞死抑制, インスリン分泌促進作用を発揮することが判明した。さらに, 膵β細胞における S -エクオールの作用は, ダイゼインよりも強力であった。以上の研究成果から, 食品関連因子である S -エクオールが膵β細胞機能を亢進させる作用を持つことが明らかとなった。