運動の外乱予測能力の基礎的データを得るために, 実験室にて前腕部の前後運動による追跡運動と, 一定値保持による静止状態を課し, その時に急激な外乱状態を作り, 外乱に対する身体の応答の様相から, 予測動作の基礎的な特性を把握しようとした. 追跡運動を動的な実験とし, 一定値保持状態を静的な実験とし, それぞれに外乱を与え, 予測能力の速応性とできばえ, 並びに筋肉ゲインの高まりの三方向から検討を加えた. その結果, 静的な動作中での外乱予測では, 規則的に外乱を導入すると人間の予測能力(速応性, できばえ)の顕著な向上がみられ, 約25回の試行の時が最も予測能力が発揮された. 動的な動作中での外乱予測では, 0.4Hz, すなわち, 2.5sec周期の目標矩形波での追跡運動が, 最も優れた予測能力を発揮した. 両動作ともに, 外部からの負荷の導入時点, すなわち, 前腕部の屈曲方向の運動時に顕著な予測能力が発揮された. さらに, 動的な動作中, 予測能力が存在する時は, 屈筋よりも伸筋の積分筋放電量が大きい値を示した.