本稿では,価値観モデル適用により協調フィルタリングを拡張したハイブリッド型推薦手法を提案する.嗜好の類似するユーザの情報を用いて推薦を行う協調フィルタリングは現在最も広く利用されている情報推薦手法であるが,評価値の偏りや一部アイテムへの評価の集中などによって推薦精度が低下する問題が知られている.この問題に対して,価値観をアイテムの属性に対するこだわりの強さと定義して構築する,価値観モデルをユーザ間類似度の計算に活用することで上述の問題解決が期待できる.一方で,その効果はユーザの特性に依存することや,推薦可能なアイテムの被覆率が低下する可能性が考えられる.そこで本稿では,価値観モデルベース協調フィルタリングと既存手法を組み合わせ,推薦アイテムリストの統合やユーザの特性に応じて効果的な推薦手法を切り替えるハイブリッド型推薦手法を提案する.5つのデータセットを対象とした比較実験を行った結果,ハイブリッド型推薦により相補的な推薦が実現可能であり,予測誤差およびユーザ・アイテムの被覆率が改善することがわかった.