L-AsA酸化抑制作用をもつワラビ中の有効成分の本体を解明しようと試み, 以下の結果を得た。 1) ワラビ成分のL-AsA酸化抑制効果 食用に適さないほど成熟したワラビ汁液には効果が認められなかった。反応溶液のL-AsA 1モルに対しCu2+0.7モルの存在で, 本有効成分のL-AsA酸化抑制効果は消失した。これより, Cu2+と有効成分の錯体形成が推測された。この効果は反応溶液のpHによって異なりpH 6.0で最も強かった。 2) 有効成分の化学的性質 有効物のディスク電気泳動を行なった結果, アクリジンオレンジによって染色される核酸物質が含まれることが示された。紫外吸収スペクトルにおいて, プリン画分はアルカリ性で浅色移動を示し, またCu2+の添加により染色効果を示した。質量分析により有効物にはアデニンが含まれることが示された。 3) 有効物の加水分解物およびその塩基組成画分のL-AsA酸化抑制効果 有効物の加水分解物およびその塩基組成画分のL-AsA酸化抑制効果を, 従来L-AsA酸化抑制効果の強いといわれている核酸関連化合物およびチオ尿素の効果と比較した。有効物のプリン画分は効果を示したが分画以前の効果とくらべると低下し, 加水分解物にはほとんど効果が認められなかつた。市販のRNA, プリン系塩基に効果が認められた。 以上の結果から, 食用に適するワラビに含まれる成分がL-AsA酸化抑制作用を示すのはCu2+と錯体を形成する塩基を含むことも一つの原因と考えられたが, それ以外に, 加水分解されることによつて効果を失う核酸関連化合物と糖, 主として酸性糖からなる化合物を含むことによるものと推察された。