食品の酵素的褐変機構の分光学的解明に資するために, リンゴの褐変果汁のほか天然基質 (加熱抽出液), カテコール, クロロゲン酸またはピロガロールにリンゴの酵素を作用させて褐変させたモデル反応液の吸収スペクトルの検討に引き続いて, これらの褐変液からセファデックスG-200でのゲル濾過により生成色素を分離し, その吸収スペクトルを測定した。褐変果汁, 酵素-天然基質系および酵素-カテコール系からはいずれも2個の着色ピークがしかもほぼ同じ溶出部位に得られた。これに対して酵素-クロロゲン酸系では1個のピークが上記両ピークのほぼ中間の位置に溶出され, また酵素-ピロガロール系では3個の溶出ピークが褐変果汁とほぼ同じ位置およびこれより遅れて認められた。これらの着色ピークはいずれも280mμの吸光度および銅-Folin反応のピークとも一致した。 しかし各溶出色素の吸収スペクトルは, いずれも互いに異なってそれぞれ特徴あるスペクトルを示し, 褐変液のゲル濾過パターンは類似したものでもその吸収スペクトルは必ずしも一致しなかった。