覚醒下開頭術における高次脳機能のマッピングの試みを報告する。症例は左下前頭回腫瘍症例。術前明らかな言語症状なく数字の順唱6 桁・逆唱5 桁が可能であったが, 術中逆唱は困難であった。術中, 背外側前頭前野 (DLPFC) の一部を刺激した際, 物品呼称は正常であったが, 4 桁の順唱が不可能となった。さらに色ストループ課題でも刺激により正答不能となった。同部位を温存しつつ腫瘍摘出し術後悪化はなかった。DLPFC は, 注意機能/ 作業記憶中央実行系の機能を担うとされる。逆唱やn-back 課題は覚醒下開頭術という特殊な環境では負荷が高すぎて安定しないが, 本症例では中央実行系の従属システムの一つである音韻性ループに関与する順唱課題と, 注意制御に関与するストループ課題を用い, 両者で陽性所見を観察した。本結果はDLPFC における注意機能の関与を支持し覚醒下開頭術における高次脳機能評価の可能性を示唆すると考えられた。