豆腐の周囲の水の初期温度を40°Cとし312 s間の短波帯処理により,豆腐中心部の温度を82°C,豆腐周辺部の温度を85°Cとほぼ均一に昇温可能なことが分かった.このとき,充填液の大腸菌を7桁および豆腐中心部の大腸菌を4桁以上低減した.一方,従来加熱処理で75°Cの温水に20分浸漬した場合は豆腐中心部の大腸菌を1桁しか低減することができなかった. また,短波帯処理と従来加熱処理が豆腐のゲル強度に与える影響は,短波帯処理では,処理温度に対するゲル強度の低下は認められなかったが,従来加熱法では,有意に破断強度が低下した.短波帯処理は従来加熱処理に比べて10°C高い温度まで加熱処理しているが,豆腐表面が高温になっている時間が短いことから,豆腐の表面の熱変性が小さく,破断強度の低下が抑えられたものと考えられる.プラスチック包装した豆腐の加熱処理に短波帯処理を応用することにより,短時間の処理で,固形物内部に侵入した細菌の殺菌効果を高め,製品の品質を向上できることが分かった.本技術は,豆腐以外のプラスチック包装された固形食品に全般に応用することが可能であり,今後の応用展開が期待される.実用化に向けた今後の課題としては,短波帯電源や整合回路の低価格化と短波帯交流の変換効率の向上が必要である.