欧州を筆頭に日本でもオープンサイエンス政策に関する関心が高まっている。オープンサイエンスの定義はいまだ明確には定まっていないが,現状を1つのムーブメントとしてとらえ,その本質を,今より研究成果の共有を進め,研究を加速ないしは効率化し,研究者の貢献を認めやすくすることとすれば,オープンサイエンスはさまざまな可能性をもつ。特に研究論文の出版という研究活動の一部のオープン化から,データのオープン化に対象が広がったことで,研究活動全体のエコサイクルを踏まえたサービスの構築とそれを念頭においた活動が進んでいる。現在の世界中のイニシアチブを俯瞰(ふかん)してみるに,これまで構築されてきた出版・共有プラットフォームが拡張され,より上位レイヤーの研究プラットフォームの構築に向かっていると解釈することが可能である。オープンサイエンスとその先にある科学技術・学術研究の新しい展開を見通しつつ,各ステークホルダーの能動的な変化が求められる。