常温流通するpH 4.6未満のトマトジュースの製造において, B.coagulans を指標に121℃,0.7分の加熱殺菌条件が世界で広く採用されている.本研究は原料トマトの細菌芽胞汚染を調べ,適切な指標菌を検討し,商業的無菌性を確保する加熱殺菌条件の算出を行った. pH 4.6未満のトマトジュースを製造する上では, B.coagulans による変敗の危害性は低く,原料汚染度の高い, B.subtilis groupや Themoanaerobacterium 属が重要で,とくに変敗事例のある Themoanaerobacterium 属芽胞をトマトジュースの加熱殺菌指標に管理するべきと結論した.本属芽胞を指標菌に,トマトジュース(pH 4.6)における耐熱性を測定した結果,D121℃値は0.3分, z 値は8.2℃で,これらの値から殺菌値を算出すると,F121℃値はD121℃値の5倍から1.5分となる.現在の加熱殺菌条件は,これを下回っている.