豆腐の力学物性を体系的に把握することを目指して圧縮試験の破断-歪曲線より弾性パラメータを求め,脂質,タンパク質との相関関係について実験的に検討を加えた.塩化マグネシウム濃度が高い豆腐については,濃度が高くなるにつれて初期弾性率は大きくなるのに対し,破断応力は低くなる傾向が認められた.この結果から,小変形での力学特性(初期弾性率)においては連続相の寄与が大きく,大変形の力学特性(破断応力,破断エネルギー)においては分散質の寄与が大きいことが示された.また,豆腐の破断応力を脂質とタンパク質の濃度によって記述するモデル式を構築し適用妥当性を検討したところ,それぞれの影響度について考察することが可能であった.さらに,弾性挙動に及ぼす脂質濃度の影響について検討したところ,脂質濃度が低いときには大変形の力学特性において硬化効果を示し,脂質濃度が高いときには小変形の力学特性において硬化効果を,大変形の力学特性において軟化効果を示し,エマルション粒子の状態が関与していることが示唆された.