東北地方太平洋沖地震津波の発生後,海岸林現地調査により,海岸林の被害状況が詳しく報告されてきた。本研究では,これらの現地調査の結果を力学的な見地から検証するため,青森県三沢市織笠のクロマツ海岸林を対象に簡易モデルを用いて現地の被害状況を解析すると共にモデルの有用性を検証した。その結果,立木に根返りや幹折れが発生するときの津波の限界流速が求められ,この値が小さい立木において実際に被害が発生したことが示された。特に,枝下高約6m 以下の立木は,被害を受けやすく相対的に限界流速が小さかった。立木の被害形態に関して予測された結果は,ほとんどが根返りを示し,現地調査の結果と定性的に一致した。形状比が限界流速に及ぼす影響については,明確な関係性がみられなかった。今回用いた簡易モデルは,各地の被害調査結果を相互に関連性をもって解析する際の一つの手段であり,これにより各地の被害状況を比較検討することが可能となると考えられる。