「広瀬神社の大ケヤキ」は樹齢1,000年といわれており,腋芽培養によるクローン増殖が困難とされている。このため,秋期に得た外植体を同じ苗条伸長培地で繰り返し培養する新たな腋芽培養法を検討した。10月下旬に幹に発生した直径およそ2cmの不定枝を採取した。この不定枝を水挿しし発生した新梢の節小片を3.4mg/L硝酸銀および3μM BAPを含む苗条伸長用のZ培地で培養した。3cm以上に伸長した苗条を0.1μM IBAおよび3μM IAAを含む発根用のR培地で培養し,残った外植体を元の試験管に植え戻した。この工程を最大5回繰り返して得られた187本の苗条の発根率は63%だが,基部が肥大した時点で明所に移した場合は84%であった。また,順化・育苗の成功率は76%であった。大量増殖を必要としない天然記念物や銘木個体の保存において,本法は継代培地が不要で効率的なクローン増殖法と考えられた。