ローストビーフの原料肉表面に接種したAおよびB型ボツリヌス菌芽胞の電気オーブンによる加熱処理における耐熱性を測定した. ビーフ・ハート・インフュージョン液体培地で形成させた供試菌株の芽胞の0.067Mリン酸緩衝液 (pH7.0) 中におけるD121℃値は, A型が0.63分, B型が0.24分で, z値はそれぞれ10.7および9.4℃であった. 供試オーブン内で270℃で加熱したとき, 供試肉の表面温度は加熱開始から25分で約100℃に達し, その後しばらくは上昇せず, 40分で再び上昇を始め, 60分で約130℃に達した. 肉表面に供試芽胞を約105CFU/cm2接種し, 250,270および300℃で加熱したが, 加熱温度の違いによる生残芽胞数の減少傾向に顕著な差は認められなかった.しかし, いずれの加熱温度においても, 接種芽胞数は40分の加熱処理で約10CFU/cm2以下に減少し, 各加熱温度におけるD値はAおよびB型ともに8.3~11.1分であった. 次に, 原料肉表面に食塩を肉重量の1, 3および5%塗布し, 270℃で加熱処理後, 恒温放置 (30℃, 1月間) し, 毒素産生の有無を調べたところ, 加熱時間が長くなると食塩の塗布量によっては毒素産生が認められなかった.抑制効果はA型よりB型で顕著だった.