食品にしばしば汚染が見られ, 強い発癌性物質であるアフラトキシンB1 (AFB1) を資化すると報告された6種の糸状菌 ( Aspergillus fumigatus, Paecilomyces lilacinus, P. inflatus, Humicola fuscoatra, Penicillium spinulosum, Trichoderma aureoviride ) を用いてAFB1の変換について検討した.本論文では主に Humicola fuscoatra による変換について述べる. AFB1を添加した培地に6種の菌を接種し, 25℃で4週間培養後の培地中のAFB1量はほとんどの菌で添加量の10%以下であった.そのうち, Penicillim spinulosum は菌体中に80%のAFB1を含んでいたが, 他の5種では菌体中のAFB1は30%以下と少なく, AFB1変換が起こっていると推察された. これらの菌の菌体マットを用いて滅菌の有無によるAF変換能の差を調べたところ, Humicola fuscoatra では大きな差が認められた.無処理の菌体は添加したAFB1を90%減少させたが, 滅菌した菌体はAFB1量を変化させなかった.このことから, この菌によるAFB1の変換は生化学的反応であることが示唆された. この菌によるAFB1の変換生成物をTLCおよびHPLCで検討したところ, 減少したAFB1はすべてアフラトキシコールAおよびBに変換されたことがわかった.