本研究では, 社会的比較において情報を好ましい意味へと再構築するスキルが劣っているのかもしれないといわれている低自尊心者でも (Taylor, Wayment, & Carrillo, 1996), 優れた内集団成員との比較による脅威から回避することが可能となるのはどのような状況かについて検討した。我々は, 集団間上方比較状況 (内集団が外集団より劣っている状況) では, 低自尊心者でさえ, 優れた内集団成員との比較による状態自尊心の低下が低減されるという仮説をたてた。95名の女性被験者に対し, IQテストを実施した後, 集団間上方比較が有るもしくは無い状況において, 内集団成員の優れたもしくは同等な個人間比較を想像によりおこなわせた。結果は仮説を支持し, 低自尊心者は集団間上方比較状況の無い時において, IQテストで優れた得点を得た内集団成員との比較後は同等比較後よりも状態自尊心が低下していたが, 集団間上方比較条件が有る条件ではこのような差が認められなかった。高自尊心者は, 集団間上方比較状況の有無に関わらず, 内集団成員との上方比較後に状態自尊心の低下はみられなかった。