本研究は, 阪神大震災で甚大な被害を受けた分譲マンションの復興過程について検討することを目的とした。具体的には, 41棟の被災分譲マンションを対象とした実態調査をもとに, 復興過程の動態を記述するドキュメンテーション技法を開発し, 分譲マンション復興過程の実態を明らかにした。すなわち, 分譲マンションの復興は, 法的には, 「客観的被害状況→復興方法の社会的選択」という因果のロジックに従って進捗するものと想定されている。しかし, ドキュメンテーション技法を用いて, 復興方法-建替か補修か-をめぐる住民間コンフリクトが顕在化したマンションの復興過程を分析した結果, 客観的被害状況が, 実は, 当事者たちによる社会的構成の産物であること, 言い換えれば, 分譲マンションの復興過程は, 法的ロジックとは異なるもう一つのロジック-復興方法の選好→客観的被害状況の社会的構成-に従っていることを見出した。このことが今後のマンション復興問題に対してもつ実践的インプリケーションを考察し, また, 本研究が開発したドキュメンテーション技法の意義を考察した。