本研究では, 感情のポジティブさ, 表出対象人物の性及び感情の強度が感情表出者の視線量にどのような影響を与えるかについての検討を行った。仮説としては, 1. ネガティブな感情表出よりポジティブな感情表出の時に, 相手に対する視線量が多い。2a. ポジティブな感情であれネガティブな感情であれ, 表出対象が女性の場合に相手に対する視線量は多い。2b. 男性に対するネガティブな感情表出時には視線活動が抑制される。3. 強い感情表出には視線量が増える。 被験者は64名の女子短大生で, 表出対象人物は男子大学生2名, 女子短大生2名であった。被験者は, ポジティブな感情を表出する条件, ネガティブな感情を表出する条件及び表出対象人物が女性と男性による2×2の4条件にランダムに割り当てられる。そして被験者は, 各性2名の対象人物に対して強い感情的調子と弱い感情的調子で4回の表出を行う。 結果は, 仮説2a, 2b, 3については支持された。すなわち, 表出対象が女性の場合に視線量が多くなった。また男性に対してネガティブな感情を表出する時には, 視線活動が抑制されていた。そして, 強い感情表出の時には視線量が多くなった。仮説1は支持されず, 感情のポジティブさが視線量に影響を及ぼすことは確認されなかった。