対人相互作用場面において, 時系列的に先行する行動とそれに解発されて後発する行動を「ユニット」としてとらえ, 本研究ではこれを「ユニット的ノンバーバル行動」と呼ぶ。本研究では, 対人相互作用場面で生起するノンバーバル行動の継起パターンを分析することで, ユニット的ノンバーバル行動についての検討を行った。 実験では, 目的を知らされていない同性の大学生20組の相互作用場面をビデオカメラで15分間記録し, それぞれの場面からサンプリングした3分間を観察対象とした。分析する行動項目は, “発話・視線・笑い・横向き・相槌・前傾姿勢・後傾姿勢・胴体の動き・両腕の動き・両手の動き”の10項目とした。イベントレコーダーを用いて, 各々の行動について, 時間軸上での“生起している/生起していない (1/0) ”の記録をとり, 頻度・総時間・平均時間を算出した。 まず, 10項目30種の行動変数のうち, 同一項目内で相互に相関があるものの一方を排除して, 行動変数を13種に絞った。更に, それら13種の行動変数を対象とした因子分析によって, 「活動性因子」「リラックス因子」「コンタクト因子」「発話因子」の4因子を抽出した。各因子に高い負荷を示している行動群間で, 行動が継起する場合の時間間隔を, 個人内および個人間について調べたところ, 1~3秒の時間間隔で継起しやすい行動群の組合せがあることがわかった。そこで3秒以内という基準で, 全行動項目間および各因子間で継起分析を行い, 個人内で“発話因子→コンタクト因子→リラックス因子→発話因子→……”という循環する継起を, 個人内で“活動性因子→活動性因子”という繰り返しの継起を見いだした。継起分析で有意な継起が認められた行動群の組合せは, ユニット的ノンバーバル行動を構成しやすいと考えられ, それら各々とポジティブな感情評定の心理的指標と正の相関をもつことが示された。 これらの結果から, 対人相互作用場面の行動を時系列的に記述し, 別の行動との時間的な関連性の観点からとらえることの重要性が示された。また本研究の分析手法および結果は, この観点から対人相互作用場面の行動を更に分析・検討するために, 有用な情報を提供するものと考えられた。