相異なる意見を有する多数派と少数派によって行なわれる集団意思決定プロセスを計量的に把握し, 最終決定や実行度といかなる関係にあるのかを実験的に検討した。5つの選択肢の中から1つを選択するという課題において, 個別に討議を行ない決定に到達した多数派 (4人集団) と少数派 (2人集団) が, 合同討議を行ない最終決定を行なうという実験状況を構成した。討議中, 発言がなされるたびに, 各成員の各選択肢に対する選好を測定した。1つの発言をはさんでの他の成員の選好変化によって, 発言の影響量を測定した。また, 意思決定後, 約1カ月にわたって, 決定事項の実行度を追跡した。実験の結果 , 第1に, 最終決定として, 個別の討議において多数派が採択した選択肢, 少数派が採択した選択肢のいずれが最終的に採択されるかは, 合同討議の開始時点において, 少数派が採択した選択肢に多数派がある一定水準以上の平均選好を有するか否かによって規定されることが見出された。すなわち, 少数派が採択した選択肢に対する多数派の平均選好が一定水準以上である場合には, 少数派の採択選択肢が採択され, 一定水準未満の場合には, 多数派の採択選択肢が採択される傾向があった。第2に, 最終決定として多数派の選択肢を採択した集団と少数派の選択肢を採択した集団とでは, 成員間影響量, および, 実行度が異なることが見出された。すなわち, 多数派の選択肢を採択した集団では, 討議における成員間影響量が小さく実行度も低かったが, 少数派選択肢を採択した集団では, 討議における成員間影響量が大きく実行度も高かった。さらに, 少数派の選択肢を採択した集団では, 討議において他の成員に影響を及ぼした成員ほど実行度が高いことが見出された。