本研究では, 面接場面において, 被面接者に面接者が見えるか見えないかということと話題の性質が, 被面接者のパラ言語にあらわれる流暢性にどのような影響を与えるかについて検討を行った。仮説としては, 1. 一般的話題より当惑的話題の場合に, 被面接者の発話において初発時間が長く, 無声休止, 有声休止, スピーチ混乱の割合が多くなり, 発話量が少なくなるであろう。また, 2. 一般的話題の場合には, ついたて条件より対面条件のときに初発時間が短く, 無声休止, 有声休止, スピーチ混乱の割合が少なくなり, また発話量は多くなるであろう。他方, 当惑的話題の場合には, 対面条件よりついたて条件のときに初発時間が短く, 無声休止, 有声休止, スピーチ混乱の割合が少なくなり, また発話量が多くなるであろう。 被験者は92名の男子大学生で, 面接者は男子大学生2名であった。被験者は, 面接者が見える条件, ついたてがあって見えない条件および一般的話題と当惑的話題による2×2の4条件にランダムに割り当てられ, 面接を受けた。 結果は, 仮説1については, スピーチ混乱率以外の変数について支持された。すなわち, 一般的話題より当惑的話題の場合に被面接者の発話の流暢性がそこなわれることが明らかにされた。仮説2は, 発話量 (発話時間, 発話語数) についてのみ支持された。つまり, 一般的話題の場合, ついたて条件より対面条件で発話量が多い方向になった。他方, 当惑的話題の場合には, 対面条件よりついたて条件で, 被面接者は多く話し, 発話がより流暢に進むことが確かめられた。