本研究は, 社会的状況がどういった次元上で認知されているか, といった問題からアプローチし, 状況認知における性差について検討することを目的とした。 大学生男子58名, 女子58名の被験者が, 30種の状況をその相互類似性に基づいて分類した。さらに, 被験者は個々の状況を12対の状況評定尺度上で評定するよう求められた。 得られた主な結果は以下の通りである。 状況評定資料の分析から, 親密性, 課題志向性, 不安の3次元が抽出された。また, 同資料のINDSCALモデルによる分析から, 不安次元においては女性が, 課題志向性次元においては男性が, より大きなウェイトを置いていることが明らかとなった。 加えて, これらの分析の対象となった状況評定尺度の妥当性について, 状況の分類資料から得られた構造上にこれらの尺度を回帰させることにより吟味された。その結果, 本研究で用いられた尺度の妥当性はかなり高いことが明らかにされたが, 同時に, これらの尺度からは抽出しえない認知次元が存在する可能性も示唆された。