同調行動について, 多数者意見の形成期, 一致期, 崩壊期の3つの変動期を設定し, 意見のRealityの高低が各期における同調にもたらす効果を検討した。 被験者は女子短大生20名であった。被験者に呈示される多数者意見が正解に近い場合をReality高群とし, 正解からかけはなれた非常に誤ったものである場合をReality低群として設定した。課題は時間判断課題を用いた。全体の30試行のうち, 意見がしだいに一致していく第10試行までを形成期, 意見が全員一致している15試行を一致期, 意見が徐々に互いに異なっていく5試行を崩壊期とした。 本研究によって見出された結果は次の通りであった。同調行動の発生ないしその持続には, 多数者意見変動要因 (形成期, 一致期, 崩壊期) の主効果が見出され, 下位検定の結果。 1. 形成期初期には, Reality高群とReality低群の同調率に差はないが, 形成期後半の, その意見を主張する人数が集団の過半数を超えた時点で, Reality高群のみ同調率が増加した。 2. 一致期には, Reality高群とReality低群の同調率に有意な差は見られなかった。 3. 崩壊期には, Reality低群は一致期で形成された同調行動が減少したのに対し, Reality高群では一致期の行動が持続する傾向が見られた。このことは, 意見のRealityが高い場合は, 一致期における多数者行動が個人に, より内面への影響を与えたものと考察した。