本研究は, 集団目標もしくはそれに至る下位課題のステップを明示することが, 集団問題解決の認知・態度両側面に及ぼす効果について検討したものである。設定された条件は, 目標課題および作業ステップ数が明瞭 (GP), 目標課題のみ明瞭 (G), 作業ステップ数のみ明瞭 (P), 目標課題・作業ステップ数とも不明瞭 (N) の4条件である。課題は, 先ず漢字の組み立てを3回行なった後 (下位課題), そこでできた漢字をもとに3文字熟語を4個作るというもの (目標課題) であった。 対象は中学校1年生で, 知能に関して集団内異質, 集団間等質の同性よりなる3人集団を構成し, 各条件に男女それぞれ2群ずつを割りあてた。 主な結果は以下のとおりである。 1) 下位課題の各ステップにおける解決時間には, 条件群間で差がなかった。これは, 一種のパズル課題であるという本課題の特質によるものと考えられた。 2) 目標課題の生産性については, 漢字・熟語ともGP条件群の成績が最も高く, N条件群が低くなっており, 集団問題解決における目標および下位ステップ数提示の有効性が確かめられた。また, こうした傾向は, 集団, 個人のいずれのレベルの成績でも認められた。 3) 目標課題で達成された成果の把持においても, 統計的に有意ではないが, 目標・下位ステップ数提示が効果を持つ傾向が示された。 4) 各成員は, 課題・解決過程・他成員に対して一般に高い参加度を示す傾向にあり, 目標提示が集団問題解決の態度的側面に及ぼす効果については, 条件による差は見られなかった。 以上の検討に加えて, 今後に残されたこの領域での問題についての討論を行なった。