本実験の目的は, 両手協応動作器を応用した協同作業法により, 精神分裂病者のcommunicationの障害を実証的に捉えようとするものである。 実験対象は, 精神分裂病患者16名およびそれらの患者と性および年令がほぼ一致する正常者16名である。課題は両手協応動作器の一方のハンドルは常に同一の実験者が操作し, 他は被験者が交代で操作して, 2人が協力して与えられた円形の図形を描くものである。作業の指標は円形の図形を1周する時間を速度とし, さらに図形からの逸脱回数を正確度とした。図形1周を1作業としてこれを連続5回繰り返した。 主な結果は次の通りである。 (1) 作業速度において, 精神分裂病患者は正常者に比べて5回の試行を通して有意に遅延した。 (2) 作業正確度において, 精神分裂病患者は正常者に比べて5回の試行を通して有意に低下していた。 以上の結果から, 精神分裂病患者は正常者に比べて協同作業能率が劣ることが実証された。この事実から本法によって2者間のcommunicationが客観的に捉えられる可能性が示唆された。