本研究の目的は, 監督者のPM式リーダーシップ・タイプのちがいが, 部下の責任感, 満足度や離職希望に及ぼす効果を検討し, さらに, その効果の心理的メカニズムを部下が知覚した影響力, および監督者と部下との知覚した影響力の差という観点から分析しようとするものである。 対象はクレーン作業に従事する男子73名で (平均年令23才), 質問紙調査法を行った。 結果は, pm型に較べPM型の監督者のもとで部下の満足度は高く離職希望は低かった。また, pm型に較べPM型の監督者のもとで, 部下は影響力 (特に対人的影響力) をより多く持っていると知覚しており, この影響力の程度が高い程, 部下の責任感や満足度が高く, 離職希望が低いことが認められた。一方, 監督者と部下との影響力の差という観点から分析した結果, pm型の監督者のもとでその差が大きく, PM型の監督者のもとで差が小さかった。さらに, 監督者と部下との影響力の差が小さいほど, 部下の責任感や満足度は高く離職希望が低いことが示された。しかしながら, 決定における部下の影響力と離職希望との間には有意な差は認められなかった。 これらの結果は, 一応仮説を支持するものであり, 集団や組織において欲求充足に及ぼす個人の持つ影響力が重大な問題であり, そのことを規定している重要な要因がリーダーシップであることを示している。