この研究は, “学校教育に対する集団力学的アプローチ”というテーマで進めている総合的研究の一部である。 研究目的は, 教師認知の規定因を主として認知者の内的条件より検討することであり, 仮説は, 達成動機, テスト不安および教師との同一化の程度が, 教師の指導性機能のP機能とM機能への認知に差異を生じさすであろう, ということであった。 被験者は, 小学校6年生10クラスで350名であった。 達成動機はHermansの質問紙による測定尺度, テスト不安はSarasonのTASCで, 教師との同一化はRingessの尺度より, それぞれ測定された。 結果を要約すると次のとおりである。 1) 達成動機の高い児童は, 教師の指導性機能のP, M両機能を高く認知する (PM型認知) 傾向が強いが、逆に達成動機の低い児童は、両機能を弱く認知 (pm型認知) する傾向にあった。 2) しかし、この事実は、女子児童の男性教師の指導性に対する認知型においては実証されなかった。 3) テスト不安の強弱が指導性認知に一貫的な影響を与えるであろうという仮説は支持されなかった。 4) また、教師との同一化の程度も指導性認知に有意な効果を有していなかったが、これは同一化の把握法に問題があると考察された。