この研究は第III報告と同時におこなわれたもので, いわゆる専制的, 民主的, 自由放任的タイプによって指導される集団が, 比較的困難な集団課題を課された場合と, 比較的容易な課題を与えられた場合に, その課題遂行活動を通して形成されてくる成員間の対人関係にいかなる差異を生ずるかを明らかにしようとしたものである。この研究では対人関係の指標として, 成員が同一集団内の他成員の名前を覚える過程及び他成員に対する好き嫌い感の変化をとりあげた。 実験の方法は第III報告の通りであるが, この研究のための資料としては, 同一集団内の他成員の名前を対面的事態で知っているだけ再生して書かせたものと, 同一集団内の全成員に対する好き嫌い感を5段階評定によって報告させたものを用いた。その資料はともに, 実験開始直前, 前期3日間の作業終了直後及び後期3日間の作業終了直後の3回に亘ってとり, それを集計比較した。 その結果, (1) 集団編成当初においては相互に未知であった成員が, 集団活動過程を通じて他成員の名前を覚える過程は, 指導タイプ及び集団課題の違いによって, かなりの相異を示した。しかも, それらの条件は別個に考えることのできないものであり, 指導タイプの差異は特に難課題の場合にはっきりその効果を表わした。 (2) 男女間の差異も無視できないもので, 特に他成員の名前を覚える速さは男子の方がかなり速かった。 (3) 集団活動事態における集団内の他成員に対する好き嫌い感情は指導タイプ, 集団課題及び成員の性の違いによって殆ど差異を生じなかった。 ただ, 易課題から難課題へ移行した集団においてのみ, その指導タイプによって明瞭な差異を生じた。すなわち, 専制的指導タイプの集団では他の集団にくらべて, 好き嫌い感の評定がマイナスの方向に変化したものが多く, プラスの方向への変化が相対的に少かった。民主的指導タイプの集団では他の2集団にくらべて, 好き嫌い感の変化したものがかなり少く, 放任的指導タイプの集団ではマイナス, プラス両方向にそれぞれ, かなり多くのものが変化した。これは, 課題が難かしくなった場合の集団内の成員相互間の交互作用及び各成員の心理的状態の安定度に基因するものと考えられる。