学級社会における児童と教師の人間関係, 特に児童から教師への適応の問題を取り上げて, 調査的な研究を試みた。得られた結果を概括すると次の如くにまとめられる。 (1) 児童と教師の人間関係の構造を, 類型因子の抽出によつて考察すれば, それは次の如くに言える。すなわち, 主軸となる類型因子は, 親近の因子と疎遠の因子であり, これに加えて, 恐れの因子, 反抗の因子などがあつて, これらの類型因子で児童と教師の人間関係が構成されている。 (2) 児童の教師への適応を, 学級を単位にして調べてみると, 学級差が相当に顕著である。調査対象となつた 12学級では, 全児童が適応または不適応への片寄りが顕著な学級が各々2学級宛あつた。学級の中の児童の約半数宛が, 適応かまたは不適応かのいずれかに片寄つていた学級は3学級であつた。ほぼ均衡のとれた適応状態の分布が認められた学級は5学級である。 (3) 学級内の男女別児童の適応状態に, 顕著な差がある学級があつた。平均的にみて, 男子児童はその0担任教師に適応した者が多いが, 女子児童は極めて適応状態が悪い学級, あるいはその反対の学級などが認められ, 学級の男女児童別にみた教師への適応には, 問題として, 今後研究をしなければならぬ点が発見された。 (4) 児童の向性と教師への適応には, その間に連関性が認められない。学業成績と教師への適応は, その連関性が離合係数で0.34であり, 予想された程の大なる連関性は認められず, 僅かな相関が認められるに止まつた。適応性性格と教師への適応との間には, 予想した通りの高い連関性があつた。 (5) 二カ年間における二人の担任教師への適応では, 適応状態が変る者と変らぬ者とがあり, 離合係数は0.43 で, その数量的な状態が明らかにされた, すなわち, 担任教師が変ることによつて, 適応状態が変つた者が71.1 %で, その中で悪い方へ変つた者が31.6%, よい方へ変つた者が39.5%であつた。適応状態が変らない者は28.9 %であつた。