教職に対する態度を測定論的に研究し, 得られた結果及びそれに附随して得られた結果の主要なものを概括すれば次の如くになる。 (1) 教職に対する地域社会の成員の態度の中には, 近代的職業観的な態度と非近代的封建的職業観的な態度とが混在している。 (2) 文化的発展段階の相異による態度の差異を検討すると, その段階のもつとも低い層の中で, 特に地理的に山村的である地域即ち山村的地域社会の成員の測定値が最高であり, したがつて教職に対して最も尊敬的・重要視的・好意的態度であり, これに反して文化的発展段階最低層中の平坦部の農村的地域社会の成員の測定値が最低であつた。この中間は文化的発展段階最高の都市及び次に位置する町であつた。 (3) 職業別に検討すると, 医師・主婦・農民・工員・商店主・公務員の順に測定値が低くなるが, 医師と他の職業との間には全て有意な差があつたが, 他の職業群の間には殆んど有意な差が認められない。但し職業を大分類した場合には事務的職業 (公務員・会杜員) と筋肉労働的職業 (農民. 工員) との間には, ある程度の差が認められ, 筋肉労働的職業の測定値が高い。 (4) 学歴による差は相当に顕著である。学歴は大学高専卒中等学校卒及び小学校卒の3層にわけられたが, 申等学校卒の測定値が最低であつて他の学歴との間には全て有意な差が認められたが, 大学高専卒と小学校卒との間には有意な差は認められない。 (5) 年令差は世代論的立場から検討されたが20～29 才の層が他の年令層と有意な差をもつて測定値が最低であつた。他の世代層間には差が認められない。 (6) 以上要するに教育に対する理解の程度が深く且つ熱意を持ち, 子女を通じてしばしば教師に接触する層に属する者と, 他方におい, 教育を盲目的に崇拝する層との二者が教職に対して積極的な好意的・重要視的態度をもつことが明らかにされた。