市販の絹ごし豆腐について,圧縮試験による力学物性測定と共焦点顕微鏡によるミクロ構造の観察をおこない,以下の結果を得た. 1) 豆腐の圧縮試験から得られた応力-歪み曲線をBST式でよくあらわすことができ,破断応力,破断歪み,ヤング率,弾性パラメーターnの4つのパラメーター値を抽出することができた. 2) 共焦点顕微鏡を使用することで,豆腐を固定せずにタンパク質と油滴を特異的に観察できること,1mm程度の厚さのある試料を用いてもタンパク質のネットワーク構造と油滴の状態が画像として得られることが明らかとなった. 3) 共焦点顕微鏡による観察結果から,市販の絹ごし豆腐は2つのグループに分けられた.すなわち,タンパク質の凝集が詰まって密にみえる「密構造タイプ」と,凝集が疎で粗い構造を示す「疎構造タイプ」である. 4) 「密構造タイプ」と「疎構造タイプ」の違いは,破断歪みの平均値の結果によく表されており,前者は50%より高く後者は50%より小さい値を示した. 5) 豆腐の力学物性測定結果は,タンパク質のネットワーク構造とよく相関し,油滴の状態との相関は低いと考えられた.弾性率,破断応力への寄与は,主にタンパク質のネットワーク構造によるためであろう.